鉄鋼

鉄鋼業界における露点計(水分計)、酸素濃度計、オイル中水分計等に関して

鉄鋼をイメージする画像

テクネ計測では、鉄鋼業界様向けに様々な用途で計測機器をご使用いただいております。

炉内の水分量・酸素濃度を管理することは鉄鋼製品の品質に対して重要です。水分測定のために酸化アルミニウムによる静電容量式TK-100露点計が主流ですが、 高分子による静電容量式TE-660露点計や高温高湿下での測定が可能なEE33温湿度露点計も一部で採用されています。 また、応答速および精度を要する場合、鏡面冷却式(ミラー式)露点計MBW973 / MBW573が使用されております。 酸素濃度測定のためには、PPMまで応答速良く測定可能な2001LCガルバニ電池式酸素濃度計、1000RSポータブル酸素濃度計が、 腐食性ガスが存在する場合、腐食性ガス中水分計TMAシリーズが使用されています。

また、SDGsに各企業が取組み始めるかなり前から、地上最大の化学反応器ともいえる高炉をはじめ、 電力消費量の大きい鉄鋼業界では様々な形でリサイクルが推進されており、工業界をリードしていると言っても過言ではないかと思います。 このリサイクル過程においても当社の計測器が欠かせない存在となっています。 腐食性ガス中水分計TMAシリーズをはじめとし、簡易測定ではTK-100露点計、2001RS酸素濃度計などが活躍しています。

身の回りの鉄について

鉄は不思議な金属です。強い、固い、自在加工といった特性を持ち、昔から人間の生活に欠かせず、我々人間の進化を支えた物質といえると思います。 産業革命以降、様々な機械や乗り物にも使用され続けています。特に、車・鉄道・船は鉄がなければ存在しなかったでしょうし、様々な産業機械や、エンジンなどの動力関連機器、私たちの暮らしに密接にかかわる家の支柱や家電などにも鉄は幅広く使用されています。金属が使用される製品の内、鉄が占める割合は95%程度あり、 鉄を見ない日はないほど、我々の生活に重要な物質です。
鉄鋼業界は古くからあり、過去に立てた設備を長年にわたって使用することから、あまり技術革新が無いと思う方もいるかもしれませんが、 同じ設備でもさまざまな改良がなされ、資源量の削減や高付加価値製品の製造などを進めています。

鉄鋼製品には様々なものがあります。特に高付加価値の製品になればなるほど、厳格な管理が必要となり、テクネ計測の各種計測器が活躍します。 例えば、自動車業界向けには、より強い製品の競争が起こっており、日本の鉄鋼各社はこの競争を一歩リードしていますが、 ここにも応答速が早く精度の高いMBW鏡面式露点計が使用されており、強度がありながら柔らかく加工性に優れた鉄により、自動車の形状もどんどん変わっています。

自動車のボディにはアルミや炭素鋼なども使われ始めています。今後は鉄鋼業界内の競争の他にも、他の材質との競争という面が激しくなり、絶え間ない研究開発が行われています。

鉄鋼製造とテクネ計測

1)焼結炉・コークス炉

鉄は、鉄鉱石と石灰石と石炭からつくられます。 ほとんどの鉄鉱石は,溶鉱炉に入れる前に,コークスや石灰石と混ぜ、焼き固めて焼結鉱にします。鉄鉱石は塊鋼と粉鋼に分かれます。 塊鋼をそのままコークスにできれば簡単ですが、コスト面の問題から、粉鋼を焼き固めます。 また還元材となるコークスは,石炭をコークス炉で蒸し焼きにしてつくります。コークスの作りやすさは、石炭の粘結性に依存します。 粘結性の高い強粘炭は、品質が良いために高いため、これをできるだけ使用しない工夫が行われています。

2)製銑

鉄は地球上の物質の30%を占めると言われています。ほとんどはマグマとして液体状で地球の中心部に存在しますが、 鉄鋼で使用される鉄鉱石は、固体状の酸化鉄(Fe2O3, FeO2)として存在します。 製銑工程では、まずはこの酸化鉄(すでに焼結炉で焼結体となった焼結鉱)から酸素を取り除きます。 つまり、高炉内で還元処理を行い、鋼となる銑鉄を取り出すための還元炉を指します。 この還元炉では、炉最上部から鉄鉱石を焼き固めた"焼結鉱"と石炭を蒸し焼きにした"コークス"を交互に層を造るように装入し、炉下部から熱風を吹込みます。 コークスはこの熱風や酸素と反応をすることで一酸化炭素や水素などの高温ガスを発生させ、炉内に吹き昇り、焼結鉱を溶かしながら酸素を奪います。 溶けた鉄分はさらにコークスの炭素と接触することで還元され、銑鉄となり取出される仕組みになっています。

熱風を吹き込むのと同時に、低品位の石炭を吹き込むPCI技術もいまだ健在の模様です。 この技術により、高価な強粘炭を1:1の割合で置換できます。1980年代にはオーストラリアのハンターバレー地区の弱粘炭が使用されていましたが、 2000年頭には技術が向上し、オーストラリアのクイーズランド州にこの時期に立ち上がったFoxleighをはじめとする非粘結性の亜瀝青炭や インドネシアのAdaroをはじめとする褐炭も一部使用されるようになりました。PCIによる吹込み量と水分量の関係は深く、当社の水分計が使用されています。

3)製鋼

高炉で酸素分が少なくなった銑鉄に、逆に酸素を吹き込むことにより、炭素・硫黄・リンなどの不純物を除去した後、成分調整を行い、鋼を作る工程です。 転炉では、2段階の処理が行われ、それぞれ一次精錬、二次精錬と呼ばれます。 一次精錬では、溶銑予備処理によりリンと硫黄を、酸素の吹込みにより炭素を取り除きます。 二次精錬では、一次精錬で炭素除去のために使用した水素・窒素を除去し、成分調整のために必要な合金を添加します。 現在では上底吹法が採用されており、酸素を転炉の上から、その他ガスを下から吹き込んでいます。 成分調整された鋼はこの段階では液体状ですが、これを連続鋳造のプロセスで固体の鋼片にし、圧延工程へと送ります。

●電気炉
鉄鉱石ではなく、スクラップを原料として製鋼する電気炉メーカーもあります。 電気により加熱するため、様々な原料を投入することができます。そのうちスクラップが主な原料となります。 電気炉を利用することにより、比較的小規模の製鋼プロセスを確立できるため、一貫製鉄工場と比較して、設備費用が少なく、需要に対する柔軟性を持ているという点が強みです。 但し、スクラップの市況に左右される、電気料が高い等の難しさも備えています。鉄のリサイクルには欠かせない炉です。

4)圧延

製鋼工程で製造されたスラブを加熱炉で1000℃に加熱し、粗圧延機と仕上圧延機で長く圧延し、 その間に温度やロール圧を調整することにより鋼板の強度や性質を整え、成分調整を行い最終製品を製造する工程です。

●熱間圧延
硬化が生じない様、温度調整を行い高温に保ち、圧延を行う工程を熱間圧延と言います。 まずは加熱炉で1000℃以上に保つことで軟化させ、オーステナイト(γ鉄)単相域からスタートし、最終的には温度を下げながら、板厚1~19mmまで薄くのばしていきます。 熱間圧延では、材料を高温にして軟化させて圧延します。圧延においては圧延ロールで鋼板を引き延ばしていきますが、 ロールの弾性変形などの問題が発生しますので、適切に回転させるための潤滑油の働きが重要となってきます。 この潤滑油の劣化診断のために当社のオイル中水分計、特にハンディ型のTEKHNEPort Oilが使用されています。

●冷間圧延
熱河圧延工程で製造された鋼板は、次に冷間圧延工程に運ばれます。 この工程では常温での処理により、1mm以下に圧延され、最終製品として出荷されます。 この工程では厚さを均一にするのと同時に、表面処理を行い、適切な製品に仕上げていきます。 耐食性・硬度・疲労度・摩耗性など、鋼板の基本的性能を整えると同時に、表面のきれいさを整えていきます。 SS鋼(一般構造用圧延鋼材)、SC鋼(機械構造用炭素鋼鋼材)、電磁鋼板や高張力鋼板(ハイテン鋼)などがこれにあたります。ここでは、代表的な表面処理につき説明します。

・焼鈍処理
焼鈍処理はやきなましとも呼ばれ、鋼板の応力歪を取ることにより鋼板を軟化させ、加工性を改善させるための処理です。 同時に炭素分をはじめとする表面原子の最終調整を行います。温度調整された10~20の部屋を通り、還元雰囲気下での温度コントロールを行いながら次工程へ進みます。

・亜鉛めっき処理
被膜形成処理の1種です。溶融亜鉛めっき処理および電気亜鉛めっき処理があります。 亜鉛が鋼板の表面で保護被膜となり、鉄が空気と触れず錆を発生させない構造です。低コスト且つ低エネルギー消費による処理で、 数十年はがれることもなく耐食性を維持します。また、もし鋼板に傷がついたとしても、犠牲防食効果により亜鉛が鉄より先に溶け出すことにより、電気化学的に鉄を守る構造を取ります。

溶融亜鉛めっき処理は、溶融した亜鉛層に鋼板をどぶ付けすることによりめっき処理を行います。フランス革命当時のフランスで生まれたといわれる古い技術です。 亜鉛層では温度が450程度と比較的低温に維持されています。これはどぶ付けした後亜鉛が垂れるのを防ぐため、低温且つ濡れ性を維持するためです。 常温の鋼板を亜鉛層につけるため、フラックスが飛びます。これを抑えるための工夫がとられていますが、 その一つが高湿環境にすることにより水分分子にフラックスを吸着させるというものです。当社では2000年代初頭よりこの問題に取り組み、 加湿装置や酸素濃度計をはじめとする各種装置・計測器の納入実績があります。

電気亜鉛めっき処理では、その名の通り電気的科学的にめっき処理を行います。 薄く均一にめっきできることが特徴で、溶融亜鉛めっきの厚さ100ミクロンに対し、電気亜鉛めっきでは25ミクロン程度を実現します。 このめっきでは、クロメート処理により光沢を出す必要があります。クロメート処理後の乾燥を確認するため露点計にて水分量を管理します。

これからの鉄鋼会社の動向とテクネ計測

日本の高炉3社(日本製鉄株式会社様・JFEホールディングス株式会社(JFEスチール株式会社様)・株式会社神戸製鋼所様)は、2021春に中期経営計画を発表しました。

1990年初頭まで目指してきた粗鋼1億トンが達成されたとき、大いに沸いたことは昨日のように思い出されます。 当時は中国企業の生産量もそれほど多くはなく、規模のメリットによるコストダウンを目指し拡大を続けてきました。 また、拡大する中国市場への浸透により販売を伸ばしました。1990年代後半に入ると、中国が世界No.1になることは明白となり、ここから価格競争が始まります。 人件費の安さ、原料の調達の容易さ、さらには特に地産地消による距離のメリットにより、価格での競争性は失われていきます。 そのような中、川崎製鐵様と日本鋼管様の合併、その後新日本製鐵様と住友金属工業様の合併、最近では、新日鉄住金様と日新製鋼様の合併といった、 大手企業の合併が続きます。規模のメリットを追求しながら、生産効率を高める戦略を進めていきます。

2021年の3社様の経営計画の中でも、さらなる集約が進む計画であり、且つDX戦略と重なり、計測器が貢献できるフィールドはますます増えるものと考えています。

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