化学
プラント

燃防爆酸素濃度計、防爆露点計、腐食性ガス中水分計による、ガス純度管理、爆発限界管理

化学プラントをイメージする画像

化学プラントで製造される製品は多種多様です。現在では世界で10万以上の化学製品が製造されていると言われています。各製品によって材料の保管や管理、製造における雰囲気条件が異なっており、個別に対応していく必要があります。

重要な計測項目としてはまずは温度・圧力があります。保管/管理プロセスでの温度管理、製造プロセスにおいては温度・圧力条件が間違ってしまえば、ターゲットとしていた製品が製造できません。次に重要な計測項目は酸素濃度だと考えます。有機物などの可燃性物質を扱う化学業界においては、爆発回避が必須であり、 燃焼の3要素(可燃物・酸素・点火源)の管理が重要です。可燃物は存在していますので、着火源(点火源)・酸素濃度の管理を行います。着火源については防爆認定にて管理を行い、酸素濃度については各ガスの爆発限界酸素濃度以下に抑えるように、不活性ガスが投入されます。 特に、不活性ガス投入量の管理のためにICS (イナートガス・コントロール・システム)が導入されます。

各物質の濃度管理も必須項目で、各物質の濃度は厳密に管理されます。これは、原料に限らず、混合するガスなど様々な濃度管理が必要です。理由は2つあります。1つ目は、濃度を間違ってしまえばターゲット製品が製造できない、または当該製品の品質の悪化につながります。もう1点は濃度管理により排出管理を適正化するということです。 最近ではSDGsによる持続可能な社会の実現に向け、排出する二酸化炭素(CO2)濃度の管理は重要なテーマとなっています。

化学プラントとは

化学プラントとは、簡単に言ってしまえば、化学反応を使ってある原料を加工し、製品を製造するプラントです。化学プラントには、一般的に言われる定義としては2つあるかと思います。1つ目は、化学製品は複雑であり、主に海外から輸入される石油や天然ガスなどの一次原料を精製しナフサ分解などを行う、 いわゆる石油化学プラントや石油精製工場/製油所と呼ばれるものです。
2つ目は、石油化学プラントで製造された各製品をパイプラインで供給をうけ、それらを主要な原料として、エチレンなど中間体の二次原料を製造する化学プラントです。こちらは、一般的に化学工場とかガス精製工場などと呼ばれます。 このような工場・工程が何段階もあり、最終的に私たちがふだん見かけるような化学製品へと生まれ変わります。

化学産業の歴史は意外と浅く、20世紀に入ってから始まりました。本格的に現在の形となったのは、第二次世界大戦後です。20世紀初頭、アンモニア合成の工業化に成功し、化学技術は飛躍的な発展を遂げました。1885年、ドイツのダイムラー(Gottlieb Daimler)とベンツ(Karl Benz)は、ガソリンを動力源とする自動車を開発しました。これによりガソリンに対する大量需要が生まれ、動力エネルギーの主役は石炭から石油へ交代します。また石油の生産に随伴する天然ガスや、 石油精製で副生される炭化水素ガスが安価かつ大量に得られるようになり、化学産業の一次原料も石炭から石油へと移行しました。

日本においては、15のコンビナートが発展の中心となりました。関東から九州にかけて、日本における工業生産高の3分の2を占める、工業が盛んな地域・地帯が以前から連なっています。 いわゆる「太平洋ベルト地帯」です。その中でも、三大工業地帯(京浜・中京・阪神)、や工業地域(鹿島・京葉・東海・瀬戸内)は有名です。 これらの地帯・地域では、生産の技術上関連性のある複数の工場や企業が集中的に立地し、原料や燃料を融通しあって合理的に生産活動を進めている「コンビナート」を形成しています。 例えば、瀬戸内工業地域にある水島コンビナートは、国内でも指折りのコンビナートです。ここでは、石油精製と石油化学の関連性だけでなく、素材産業である鉄鋼から加工組立産業である自動車産業のようなものまで、 幅広い産業があることが特徴的です。海外からコンビナートへ到着した原油は、石油精製工場、ナフサ分解工場、石油化学誘導品工場、関連産業工場など目的に合わせた工場へ運ばれます。 これらの工場で私たちの身近にある製品が作られるのではなく、ここではその「原料」を作ることに特化しています。

有機化学製品の種類

ここでは、主な有機化学製品につき紹介します。

・エチレン

石油から作られるものは多くありますが、その代表的な原料はエチレン(C2H4)です。 あまり耳なじみがないかもしれませんが、実は私たちの身近な物や、多数の産業においてあらゆるものの原料になっています。 粗製ガソリンと呼ばれるナフサを熱分解して、エチレンが製造される工程を持つエチレン製造工場が各コンビナートにあります。 ナフサを50~90wt%の水蒸気と混合し、バーナーで750~900℃にて管理された反応管内を通過することにより、僅か1秒以下でナフサの分解反応が行われます。 分解された気体は、400℃程度に急冷し分解を終了させます。これを何度も行うことによりエチレンをはじめとする低分子炭化水素であるプロピレン、ベンゼン等が生成されます。

・低密度ポリエチレン

エチレンを高圧重合法により製造されたもの。原料を加熱して、融解させたものを型の中から押し出すような手法に向いており、薄い膜に加工しやすいのが特徴です。 加熱すると軟化して成形しやすく、冷やすと固まる性質があります。そのため、熱を加えると封をすることができ、透明性や防湿性を保つことができます。 安価であり、多様なものに使われていますが、厚手のポリ袋や大型のパレットカバーなどが代表的です。

・高密度ポリエチレン

低圧・中圧の重合法によって製造されたもの。低密度ポリエチレンと比べて比較的高温で軟化します。薄膜に加工しても強度に優れ、半透明であることが特徴で、低密度ポリエチレンよりも約2倍防湿性とシールの密着性があります。 代表的なものとして、レジ袋などのような半透明のポリ袋に使われています。

・塩化ビニルモノマー(塩ビ)

塩化ビニルモノマーは、エチレンと塩を反応させ、熱分解により製造されます。略して塩ビモノマーと言われることもあります。 塩化ビニルモノマーは多数の最終製品に使用され、我々の生活にも欠かせないものです。まず、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルなどの二次製品となり、さらに複数の形態を経由することにより、 最終的には、衣類や水道パイプ、断熱材、電線、日用品などとなります。塩化ビニルモノマーはクロロエチレンとも呼ばれ、沸点-13℃、無色透明の気体であり、加圧して沸点を上げ、液化させた状態でハンドリングを行います。

・エチレンオキサイド

エチレンオキサイドは、エチレンと酸素を反応させ環状エーテルとなったものです。滅菌力が強いため、医療業界で主に使用されます。医療器具滅菌剤や界面活性剤などが主な例です。 さらには、エチレングリコール、エタノールアミンなどの原料になり、最終的には日用品として広く使用されています。エチレンオキサイドの沸点は10.4℃で、親水性の無色気体です。

・メタクリル酸メチル

メタクリル酸メチルは、MMAとも呼ばれ、モリブデン系触媒によりイソブチレンを酸化し製造します。アクリルの原料として有名ですが、この製造プロセスにおいて、原料の酸素濃度管理は極めて重要となります。 当社のModel 1000RS、Model 2010BX酸素濃度計がこの管理に主に使用されています。

・スチレンモノマー

スチレンモノマーはスチロール・スチレンと呼ばれ、エチルベンゼンから水素を除去し製造されます。重合することにより粘度が上がり固体になる特性があるため、 様々な用途に使用されていますが、主なものとして合成ゴムが有名です。また、ABS樹脂の原料ともなっています。当社では、重合プロセスにおいてICS機器が貢献しています。

無機化学製品の種類
無機化学製品とは、炭素(機)がないもの、CO、CO2、そのものおよび炭素の同位体です。無機化学品には、硫酸,ソーダ工業,肥料,カーバイドなど、様々なものがあります。この中で、ソーダ工業につき説明します。

・ソーダ工業

ソーダ工業は、ソーダ灰製造から始まりました。塩(NaCl)から、アンモニアガスや炭酸ガスを用いソーダ灰と呼ばれる炭酸ナトリウム(Na2CO3)を製造するものです。 現在の主流は、塩水を電気分解し、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム-NaOH)、塩素(Cl2)、水素(H2)を製造する電解ソーダ工業です。塩水を電気分解させることにより、 苛性ソーダを精製し、塩素、水素を期待で取り出すものです。苛性ソーダは紙パ・繊維・石鹸など様々な用途に使用され、身近な製品に必要なものです。

2NaCl + 2H2O → 2NaOH + Cl2 + H2

式にしてしまうと簡単そうに見えますが、このプロセスでは塩素の管理が厄介です。 このように単純にCl2という気体の状態で出てくれば回収すれば終わりですが、現実的にはその様なことはありません。 電気分解時にまずは腐食のより強い塩酸(HCl)が出てきます。一般的にウェット塩素と呼ばれるものです。これによる腐食のリスクを抑え、純粋な塩素(Cl2)を取り出します。
当社の腐食性ガス水分計TMAシリーズは、このプロセスにおいて、水分量をppm単位で測定ができ、各プラント様のお役に立っています。塩酸中でも測定できるのが特徴です。

化学業界と環境について

化学製品を使用するにあたり便利な一方で害を及ぼすこともありました。 戦後、日本が急速な経済成長を遂げていき、社会・経済活動によって環境が破壊され、大気汚染や水質汚染が深刻な問題となりました。その中でも特に重大な影響のあった、 熊本県の水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、といった四大公害病が 発生しました。公害は、工場が排出した廃液やけむりが原因と判明し、公害問題への対策を求める世論が高まりました。そのため、昭和42年、公害対策基本法が制定されました。 この法律では、企業・事業者や政府、地方公共団体などの責任の所在を明らかにし、公害を防ぐための基本的事項を政府が定め、環境基準を設定しました。 さらに、昭和46年総理府の外局として環境省を設置し、総合的な環境保全に関する行政を進めてきました 環境省では、公害対策だけではなく、時代に合わせて必要な環境問題に取り組んでおり、現在ではCO2(二酸化炭素)の排出を抑えるために、 各社取組を行い、持続可能な開発目標「SDGs」にも取り組んでおります。テクネ計測でも、SDGsに対して、2030年までに達成する3つの目標を掲げ、実践しています。

環境にやさしいプラスチック

近年では、植物由来(サトウキビやトウモロコシなど)の原料を利用して、バイオマスプラスチックが作られています。 バイオマスプラスチックを燃やす場合も、二酸化炭素は排出されますが、原料の植物が育つ際に光合成によりに二酸化炭素を吸収するため、 差し引きゼロになると考えられ大気中の二酸化炭素量に影響がありません。このような考え方を「カーボンニュートラル」と呼び、最近注目されています。 他にも、「生分解性プラスチック」というものがありますが、バイオマスプラスチックとは異なります。 生分解性プラスチックとは、微生物が分解することで、二酸化炭素と水になる性質のあえるプラスチックのことです。そのため原料が植物由来とは限りません。

化学プラントにテクネ計測が貢献できること

本文初頭にてご説明しましたが、当社は化学業界様に対して3つの役割を担っているものと考えています。

①安全への貢献

燃焼3要素の管理による爆発限界管理のための酸素濃度計計測で、安全への貢献を行っています。 制御用途としてOxytron 2000、濃度管理用途としてMini-ICS、これらとサンプリングシステムを組み合わせイナートガス・コントロール・システム(Inert Gas Control System / ICS)として導入頂いております。 サンプルの採取および不純物の除去、さらには測定条件の定常化を実現し、安定的な測定により安全管理およびコストダウンに貢献します。

②純度への貢献

ガス純度を管理する必要性がある場合、不純物として酸素濃度、露点(PPM水分濃度)を測定することが多いです。 酸素濃度分析ではPPMを高応答速で計測可能な2010BR、%レベルでは210BRが使用され、露点測定ではTK-100-Ex露点計が使用されます。水素や溶剤や他可燃性ガスが含まれることから、防爆認定が必須となる場合が多く、酸素濃度計ではガルバニ電池式酸素濃度計が使用されることが多いです。 コンプレッサーエアーや窒素の露点測定の場合、非防爆のTK-100露点計が使用され、腐食性ガス中の水分測定にはTMA腐食性ガス中水分計も使用されます。

③管理への貢献

化学品原料の保管状態管理は極めて重要です。状態により原料の特性が変化すれば、原料として使用できない場合があります。これはサイクルの早い主原料ではなく、サイクルの遅い副原料について言われるケースが多いです。当社では、国内防爆認定機器を2種類取りそろえ、またそれ以外の非防爆機器とともに、設置の工夫などの説明を通じて、お客様の管理方法への提案を行っています。

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