もいすちゅ〜の水分講座
露点計メーカーが基礎から解説

露点の求め方とは?
湿度との違いを解説!
基礎からわかりやすく学ぼう!

露点の求め方の原理を理解するためには、露点とは何かということを最初に理解する必要があります。
今回は、露点とはどんなもので、湿度とどのように違うのか、そして、露点の求め方はどのようなものがあるのか飽和水蒸気量との関係も踏まえてくわしく解説します。

イラスト:もいすちゅー

露点とは?まずは定義を知ろう

露点(露点温度)とは、気体を冷やしていったときに結露が始まる温度のことです。
空気中に含まれている水蒸気の割合が少なければ露点は低く、水蒸気が多ければ露点は高くなります。つまり、露点は空気中の水蒸気量を数値化したものであり、湿度と同じようなものを表しています。
湿度は気温が変化すると一緒に変化してしまいますが、露点は空気中の水蒸気量が一定であれば気温の変化によらず一定の値となります。
また、湿度と露点は互いに換算可能です。
例えば、梅雨時期の場合は気温27℃で、湿度80%だったとき、露点は23℃となります。
一方、乾燥しがちな冬の時期は、気温15℃で湿度30%のとき、露点は-2.4℃と換算することができるのです※詳しくは後述。

図:露点

露点の求め方とは?
露点の基礎から学ぼう

露点の求め方を知る前に、「飽和水蒸気量」や「湿度」についても復習しておきましょう。
空気中に存在できる水蒸気の量には限界があります。このことは液体の水に食塩を溶かす実験を思い出すと理解しやすいかもしれません。
水に食塩を溶かしていくと、どこかの段階でそれ以上食塩が溶けなくなります。これは水に溶けることのできる食塩の量が決まっているからです。
空気に含まれる水蒸気の量もこれと同じように考えることができます。食塩水の場合、溶けることができなかった食塩は固体のまま残りますが、空気に入りきらなかった水蒸気は液体の水となって現れます。

飽和水蒸気量とは

「空気中に水分がこれ以上入らない」という状態を「飽和状態」と呼びますが、「空気の中に、これ以上水蒸気が入らない」という状態における水蒸気の量を「飽和水蒸気量」と呼びます。
より厳密に言うと、飽和水蒸気量とは、1㎥の空間に存在できる水蒸気の質量[g]を指す言葉です。
飽和水蒸気量は温度によって大きく変化します。以下に、温度を変えた場合の飽和水蒸気量のおおよその値を示します。
また、次のように湿度の割合次第で、水分子の個数も異なる結果となります。
具体的に、気温25℃、飽和水蒸気量23.0g/㎥のときの、湿度と水分子の個数の変化を見ていきましょう。

※アボガドロ定数:6.02×1023[/mol] とします
湿度50%のとき、水分子の数は、

23.0[g/㎥]×0.5÷18[g/mol]×6.02×1023[/mol]
=3.85×1023

湿度25%のとき、水分子の数は、

23.0[g/㎥]×0.25÷18[g/mol]×6.02×1023[/mol]
=1.92×1023

と、水分子の個数も変動していきます。

湿度に関する指標の変化について、もっと詳しく知りたい方は次の表をご確認ください。

湿度単位換算表
図:飽和水蒸気量

例えば、0℃の空気の飽和水蒸気量(1㎥あたり4.85g)は、30℃の空気の飽和水蒸気量(1㎥あたり30.3g)の1/5程度しかありません。
温度が高ければ高いほど飽和水蒸気量は大きく、温度が低いほど飽和水蒸気量は小さくなります。
よって、空気を冷やしていくとどこかの段階で空気中の水蒸気量が飽和水蒸気量を下回り、水蒸気が液体の水に変わり始めます。これが「結露」という現象です。
暑い夏、グラスにジュースと氷を注いで机の上に置いておくと、グラスの表面に水滴が現れます。これは空気がグラスによって冷やされ、空気中の水蒸気量が飽和水蒸気量を下回ってしまったために起こる現象です。

図:露点

湿度とは

テレビを見ていると、「本日の気温は32℃、湿度は90%、蒸し暑い一日になるでしょう」のようなお天気レポートをよく耳にします。
この湿度というものは、先ほど登場した飽和水蒸気量と深い関係がある言葉です。
湿度は以下のように定義されます。

(湿度)=(実際に存在する水蒸気量[g/㎥])/
(飽和水蒸気量[g/㎥])

つまり、飽和水蒸気量が10g/㎥で、そこに実際存在する水蒸気量が5g/㎥であれば、湿度は50%ということになります。

図:天気図

露点とは?まずは定義を知ろう

湿度と露点は同じようなものを表していると言いましたが、ではなぜ湿度と露点、2つの表し方があるのでしょうか?
答えは、それぞれに得意なこと、不得意なことがあるからです。
湿度の場合、空気中の水蒸気量が一定だとしても、温度が変われば一緒に変わってしまいます。
屋内であっても足元と天井付近では1℃や2℃の温度差が存在し、その違いによって湿度10%程度は簡単に変動してしまうのです。
つまり、湿度というのはかなりいい加減な数値であり、厳密な水蒸気量を表すのには向いていません。絶対的な水蒸気量を表すのには露点が向いています。
一方で、湿度は私たちの体感とはよく一致します。「何となくじめじめしている」、「空気がカラッと乾燥している」という私たちの感覚を数値で表すには良い物理量なのです。
海外の天気予報では露点が使われることがありますが、日本の場合、天気予報はほとんど湿度が紹介されます。
四季ごとに大きな寒暖差や湿度差がある日本では、天気予報は基本的に湿度のほうが空気が乾燥しているのか、じめじめしているのか、洗濯物が乾きやすいのか、乾きにくいのかがわかやすく伝えられるからです。

図:結露が発生する気温差と湿度の関係

露点を求めるメリット

ものづくりの工程において、ガス中の水分量をコントロールする必要がある箇所で露点が必要になります。例えば、酸素や水蒸気が品質を大きく左右する場面で露点および露点計が使われています。
ここでは半導体の製造と炉での活用方法をもとに、露点を求めるメリットを紹介します。

1.半導体製造で露点を求めるメリット

半導体製造において、露点を求めることで酸化や劣化、ショートを防ぎ、製造プロセスに適した条件を保つことができます。
半導体のような微細なデバイスの製造では、ごく微量でも水分があると錆の原因になります。
さらに、酸素やその他の不純物があることによって意図しない化学反応が起こり、劣化の原因になります。
不要な化学反応を防ぐため、不活性ガスである窒素(N2)やアルゴン(Ar)で満たされた環境で製造し、製品の一貫性と品質を確保することができます。
また水は電気を通すため、ショートの原因にもなるため露点を制御しています。

2.炉で露点を求めるメリット

炉をより効率的に燃焼させるために、実は適量の水分が必要です。
燃焼プロセスにおける適切な湿度を制御するために、気温によって変化しない露点が使われます。
適切な湿度制御により、燃料を効率的に使うことで環境への負荷を軽減することができます。
以上のように、露点計を使用することは、エネルギー効率の向上や環境への配慮、安全性の向上など、さまざまな作業工程に役立つメリットとなります。

その他、より詳しく露点について知りたい方は「露点とは?まずは、露点計の基礎から」の記事もご参照ください。

露点の求め方(計算するための考え方)

「露点」は、気温の変化や寒暖差によって影響を受ける気象現象の一つです。
寒暖差が大きい場所では、夜間に気温が急激に下がることで、空気中の水蒸気が冷やされて露点を下回り、露が降りる現象が見られることがあります。
これは、夜間の気温が露点を下回ることによって、空気中の水蒸気が水滴として凝結して地面や物体に付着する現象です。
気温が17℃の場合と、気温が23℃の場合では、水蒸気が水滴として凝結する水蒸気の質量(g)はどのように変化するのでしょうか?
次の問題を解きながら考えていきましょう。

図:露点の求め方

【露点の計算-問題文】

前提として、空気1㎥に含むことができる最大限の水蒸気の質量(g)は次のように与えられています。

気温が17℃の場合:14.5g
気温が19℃の場合:16.3g
気温が23℃の場合:20.6g

さて、気温が23℃で湿度が80%の空気を、17℃まで冷やすとき、水滴として発生する水の質量は何gでしょうか?
※ただし、空気中の水蒸気量は飽和水蒸気量を超える場合は結露として水滴となります。
まずは露点が何度になるのか見ていきましょう。
※問題は、都立高校共通入試問題を改変して作成

気温(℃) 17 18 19 20 21 22 23
飽和水蒸気量
(g/㎥)
14.5 15.4 16.3 17.3 18.4 19.4 20.6

【露点の計算-回答】

露点の計算:
露点と気温の飽和水蒸気量はほぼ等しいという特性がありますので、気温が23℃、相対湿度が80%の時に含むことのできる飽和水蒸気量を求めることができれば、露点が何度なのかも導き出せます。

気温が23℃、相対湿度が80%の時に
含むことのできる飽和水蒸気量
=20.6×80/100=16.48 g/㎥

上記の表を見ると、飽和水蒸気量が16.48g/㎥のときの気温は約19℃ですので、露点も大体19℃ということになります。

水滴の質量の計算:
水滴として発生する水の質量は、飽和水蒸気量から露点の水蒸気量を引くことで求めることができます。

水滴の質量 =
飽和水蒸気量(23℃の場合の質量)
- 露点(19℃の場合の質量)

水滴の質量 =
20.6g - 16.3g
= 4.3g/㎥

したがって、気温23℃で湿度80%の空気を17℃まで冷やした際、水滴として発生する水の質量は約4.3gとなります。
この計算からもわかるように、飽和水蒸気量は温度によって変化します。

露点はどのように測ることができるの?

露点は「空気中に含まれる水蒸気の量」を表しているため、水蒸気の質量を測れば露点が計算できます。と言っても空気中の水蒸気の質量を測ることも簡単ではなく、体重計のような固体・液体用の質量計は使えません。
しかし、それを測定するためのツールは存在します。では、それらはどのような原理で測定できているのでしょうか?
いくつか、測定器の元となる実際の測定方法をご紹介します。

静電容量から求める

静電容量(電気回路における重要な物理量の一つで、電荷と電位差(電圧)の関係を表す指標)を利用した露点の求め方の原理は、気体中の水蒸気の含有量によって、センサーの静電容量が変化するという現象を利用しています。
露点計のセンサーには、水蒸気を吸着しやすい物質が用いられます。この物質が水蒸気を吸着すると、センサーの静電容量が変化します。
静電容量を利用した露点計は、高精度かつ迅速に露点温度を測定することができるため、湿度や結露の監視、冷却装置や乾燥機の制御、気象観測などのさまざまな用途で幅広く使用されています。
このようなセンサーは産業分野や気象学などで重要な役割を果たしており、環境管理や品質管理などに大きく貢献しています。
静電容量を利用した露点計について、もっと詳しく知りたい方はこちら 技術説明「TK−100露点計」

水蒸気の質量から求める

水蒸気と特定の物質との化学反応を利用する方法です。例えば、五酸化リンやヨウ素は水蒸気と反応し、別の化学物質に変わりますが、この反応によって元々あった五酸化リンやヨウ素等がどれだけ減ったかを調べることで間接的に水分量の計測が可能です。
水蒸気と特定の物質との化学反応を利用した露点計について、もっと詳しく知りたい方はこちら
露点計・湿度計の種類

結露する温度から求める

露点の定義に従えば、空気を閉じ込め、段々と冷やしていき、結露が始まる瞬間の温度を記録すれば対象とする空気の露点が求められます。しかし、まとまった空気を冷やすのは大変ですし、時間も掛かります。
そこで、より簡単、正確に露点を求める方法として、鏡面冷却式と呼ばれる方法があります。
空気を一定の速度で冷やした鏡にぶつけ、鏡面の水滴を読み取ります。ちょうど、夏場の冷えたグラスに水滴がつくのと同じ原理です。
なぜ鏡を使うか、それは表面についた水滴を見つけやすいからです。鏡に一定の強さの光を当てつつ冷やしていけば、水滴がついた瞬間に鏡から反射される光が弱くなり、反射光強度の変化から露点を正確に見積もることができます。
結露する温度を利用した露点計について、もっと詳しく知りたい方はこちら 技術説明「ミラー式露点計測定原理」

露点の勉強につまづいたら?

露点の計算式は初めて見た場合に難しく感じるかもしれませんが、まずは露点が何を意味するかを理解することから始めましょう。
最も重要なのは、焦らずに自分のペースで学ぶことです。
数学的な概念が難しいと感じるのは普通のことであり、少しずつ慣れて理解できるようになるはずです。
学習を楽しむ心を持ち、質問をすることをためらわずに、露点の概念をマスターしていくことを目指してください!

図:露点の勉強

株式会社テクネ計測は、国産の露点計メーカーです

露点計(水分計)と関連性の高い酸素濃度計・温湿度計等様々な計測機器も取り扱っています。
工場向けの計測機器メーカーは一般の方にはなじみは少ないと思いますが実は皆さんがよく知っている大手メーカーのほとんどが当社のお客様です。
当社の計測機器を使用することで、生産性向上や環境に優しいものづくりに貢献しています。